傷ついてもいい
「もう知られちゃったのかな?母さんのこと」

直己は、急に真面目な顔になって佳奈を見た。

「あ、うん…」

佳奈は、神妙な顔になる。

「そっかあ。佳奈さんには、知られたくなかったんだけどなあ」


「なんで?なんで言ってくれなかったの?」

佳奈は、想いをぶつけるように聞いた。

「対等でいたかったんだ」

「対等?」

「佳奈さん、優しいからさ。俺、全部
話したら甘えちゃいそうでさ」

「…バカ…」

「バカ、バカ言わないでよ」

直己は、笑った。

甘えてもいいよ、と言いたかった。

視線が少し絡みあう。



「斎藤さんとは、うまくいってんの?」

直己は、急に話を変えた。

「あ、うん」

佳奈は、少し笑顔になる。

うまくいっている、それが正しい答えだと思った。
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