傷ついてもいい
夢を見ているのだ、と佳奈は思った。

直己と出会ってから今日までの夢を。

月明かりに照らされた直己と唇を重ねあう。

お互いの体温を感じながら、強く抱きしめあった。

「佳奈さん…いれるよ?」

「ん…」

佳奈の真ん中に直己がまっすぐに入ってくる。

「あ…あ…」

「佳奈さ…」

グッ…と力をこめて直己が佳奈の奥まで入ってきた。

このまま離れたくない。

もっともっと直己を感じていたい。

深く重なりあっていたい。

佳奈は、直己の背中に抱きついて、肩を噛んだ。

「佳奈さん…愛してたよ。ずっと」

直己は、目にいっぱい涙を溜めている。

「私も、愛してた…」

直己の涙が佳奈の肩に落ちて、つつぅ…とまくらを濡らす。

佳奈は、泣かなかった。

もっと深く傷つけて欲しい。

忘れられなくなるくらいに深い傷を、直己につけて欲しかった。





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