傷ついてもいい
「かなさあん」
ぐらぐらと身体を揺すられる。

「はあ〜?」

目を開けるとものすごい近くに直己の顔があった。

「うわーっ!ななななに?」

「なんで、俺の布団で寝てんの?もしかして俺酔ってなんかやらかしちゃった?」

直己は、少し申し訳ないような顔をしている。

「違う、違うっ!やってない!なんもない!アンタ寝かせて疲れて寝ちゃっただけ!」

佳奈は、慌てて布団から起き上がった。


「そう、良かったあ」

直己は心からホッとしたような顔をしている。

「当たり前でしょ?なんかあるわけがない」

「なんで?」

突然、直己は真顔で佳奈を見つめた。

「なんでって、だから、酔っててもやっぱりおばさんじゃ萎えるっていうか…」

なんでこんなこと言わなくちゃならんのだ、と佳奈は情けない気持ちになる。


「なんかさあ、佳奈さんて、やたら自分のことオバサンオバサンって言うよね」


「え…」

「そういうのやめたほうがいいんじゃない?」

「なんでよ」

佳奈は、更に情けない気持ちになる。なんで直己ごときに説教されねばならない?

「佳奈さんくらいの年齢の人って、すぐに自分のことオバサンって言うけど、ほんとは、そんなことないですよーって言ってもらいたいだけなんじゃないの?」


「な…」


当たっている、気がする。


「まあ、誰かに言われないと不安だってのもわかるけどね。佳奈さんは、まだまだ可愛いと思うよ」

ニコリと笑顔を見せられて、佳奈は、完全にノックアウトしてしまった。

可愛いって?可愛いって言った?

「さあてと、今日は、朝からバイトなんだよねえ」

直己は、伸びをしながら洗面所に向かった。





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