傷ついてもいい
振り返ると斎藤が立っていた。

スーツ姿では無く、パーカーにデニム姿の斎藤は、いつもより若く見えた。

「ああ、斎藤さん」

佳奈は、なんだか嬉しくなって笑顔で挨拶した。

「昨日は、アイスありがとうごさいました」

ぺこりと頭を下げると「アイスくらいでやめてください」と、斎藤は笑った。

笑うと少し目尻に出る皺が斎藤を魅力的にしている。


「お酒、飲まれるんですか?」

斎藤は、焼酎の棚を眺めながら聞いてきた。

「あ、そんな飲まないんで、どれが飲みやすいかなあ、と」

佳奈は、可愛らしい瓶のリキュール類などを手に取る。

「そうですね。やっぱり梅とか柚子とかが女性はいいんじゃないですか?」

女性は、と言われて、佳奈は少し迷った。

直己は、何を飲むんだろう。

「斎藤さんは?どういうお酒飲むんですか?」

「俺は、そうだなあ」

言葉が少しくだけるのを聞いて、佳奈は嬉しくなる。

「やっぱりビールと、あと芋焼酎が」

斎藤は、芋焼酎の瓶を手に取った。

「へえ」

そうだよな。ビールだ、ビール。若い男の子ならビールだよな。

佳奈は、うんうん、と一人で頷いた。

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