傷ついてもいい
『もしもし?』

そういえば、こちらの番号は知らせていなかった。

佳奈は、あわてて名乗ろうとした。

『花村さんですか?』


「え?どうして?」

佳奈は、不思議に思った。


『いや、この電話は、プライベートの番号なんで、両親と妹くらいにしか知らせてないんですよ。見覚えない番号だったから、花村さんかなって』


「そうなんだ」

佳奈は、少しリラックスする。

『電話、待ってたんです。正直言うと』

「ほんとですか?」

『朝、顔を見て話すのも楽しいけど、電話だと少しは本音が聞けるかなって」


「そんなー、私がいつも嘘言ってるみたい」

『あ、そういう意味じゃないよ』


斎藤は、優しく否定した。

『俺のこと、どう思ってるのかなって』

斎藤は、いきなり確信をつく質問をしてきた。

結構、ウダウダしてしまう佳奈とは、合うのかもしれない。

「優しいし、ちょっと強引だけど、男らしいなあと思ってます」

佳奈は、少し可愛らしく言ってみた。

この感覚は久しぶりだ。

10年ぶりかもしれない。

『本当に?!ウザいオヤジって思ってない?』

「まさか!」

佳奈は笑った。
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