幸せになる方法〜「ずっとそばにいたのに.....」スピンオフ〜
だから、今はこれでいい。

答えを急ぐことはないと思う。

彼女は俺をどう思っているのかわからないけど、頼られるのは嬉しいし、二人と過ごしていると、いつも柔らかな優しい空気に包まれているような感覚に陥る。



だけど、この気持ちって何だろう?

もしかして、「幸せ」って言うのかな.......



温人の父親でもない俺が、そんなことを言うのは図々しいのかもしれない。

でも、その日を境に、この親子と一緒にご飯を食べたり、遊んだりする時間は、少しずつ増えて行った。

彼女は次第にいろんなことを相談してくれるようになったし、時には三人で出かけたり、温人を預かったりする機会も出て来た。

だから、その感覚は、俺の中でどんどん強くなっていくばかりだった。



実際、二人といると、楽しいだけじゃなく、学ぶことも多かった。

生きていれば、思う通りに行かないことも、我慢しなくちゃいけないことも、たくさんある。

その分、気持ちが通じ合えれば嬉しいし、互いを思いやることで、知らず知らずのうちに、人はみんな、誰かを支えたり、支えられたりしている。



当たり前のようで、ダラダラと学生生活を送っているだけでは忘れがちなことだ。

彼女と、温人と出会えなかったら、この年にして、改めてそんなことを考え直すチャンスが、俺には訪れなかったんじゃんないかと思う。
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