もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~


「純麗ちゃん、ちゃんと喋ろうよ」くらいは言ってくれると思っていたのに、しどろもどろな私をスルーしたまま、リュウは再び歩き出してしまった。



何?なんなの?



私、リュウを怒らせるようなことした?



所々、小走りにならないと、はぐれてしまいそうなリュウの背中を追い掛けながら、段々と腹が立ってきた。



買い物に付き合ってあげてるのは私なのに、なんでこんな状況なの?



これなら、帰ったとしても私は悪くないよね。



私は足を止め、リュウの背中に呼び掛けた。



「リュウ!」



すると、返事もせずに、ただ振り返るだけのリュウ。



「帰る!」



私は一言だけ、そう言うとくるっと方向転換をして、来た道を戻った。



今度は小走りじゃなくて、私のペースでゆっくりと。



後ろから近づく気配は感じていた。



20歩くらい歩いたと思う。



その辺りで、確実に背中に感じる気配。



謝ってきたって簡単には許さない。



きちんと、怒っていた理由を説明させて、2度としないと誓わせる。



その後は暫く、機嫌が悪い振りでもしてよう。



リュウの分際で、こんな仕打ち許さない。



リュウは私のご機嫌取りでもしてればいいんだ。



「純麗ちゃん」



「何よ?」と言って振り返ろうと思ったのに、私はリュウに引きずられるように連行された。



そして


「いいから乗って」


と言われ、強引に車の中へと押し込まれる。


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