バスボムに、愛を込めて
同性で年子の兄弟なら、すごく仲が良さそう。
あたしもお姉ちゃんか妹がいればなぁと昔はよく思ったものだ。
「いや、今は……」
シートからはみ出した手で砂浜に触れ、手のひらに乗せた砂を砂時計のように少しずつこぼす本郷さん。
そして海の方を向いて目を細めると、独り言のように呟いた。
「もう何年も会ってないんだ。向こうは会いたがってるらしいけど、俺が断り続けてて……」
「え?」
……どうして? 仲の良い兄弟なら、断る理由はないよね。
あたしの疑問を感じ取ったらしい本郷さんは、言葉を濁しながら、静かに話す。
「俺がガキなんだ、たぶん。いつかは会わないと……、っていうのもわかってる。でも、まだその勇気がない」
砂のなくなった手のひらを、ぎゅっと握りしめてそう言った本郷さん。
自分に対して苛立っているような、厳しい声だった。