バスボムに、愛を込めて


今の言い方では、あたしに詳しい事情は全然わからないけど。ほんの少しだけ、今まで見えなかった本郷さんの内側に触れることができた気がした。

それにもう少し本郷さんとの距離が縮んだなら、その時は彼の方から教えてくれるんじゃないかって、そう思えたから……今はまだ、それ以上のことは聞かない。


「……あたしで何か力になれることがあれば言ってくださいね? また海が見たくなったらいつでも付き合いますし、愚痴とかもどんどんこぼしてください! なんならサンドバッグにでもなりますよ」


シュ、シュ、と口ずさみながら下手なシャドーボクシングを披露するあたしを、本郷さんは呆れたように笑う。


「それでボコボコにされたからって、“責任とってお嫁にもらってください”とか言わないだろうな?」

「あ! それナイスな考えですね!」

「却下」


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