バスボムに、愛を込めて


リョータさんを見る本郷さんの瞳が、眼鏡の奥で細められた。

彼の中でずっと凍り付いていた何かが、今ようやく溶け始めたんじゃないかと、あたしには思えた。

二人とも、きっと今までこうして話をする時間が足りなかっただけ。

海で貝殻を拾い集めていた頃の仲の良い兄弟にだって、今からでも戻れるんじゃないかな……

そんなあたしの思いを裏付けるように、本郷さんはリョータさんの正面に立つと言った。


「あの時に勝手に傷ついた俺が壁を作っていただけで、兄貴の本質は昔から変わってなかったんだな……」

「人ってそんなに簡単に変わるものじゃないわよ。瑛太だって、また誰かを好きになることができたじゃない」

「ああ。……そうだな」


本郷さんとリョータさんが、よく似た穏やかな笑みを浮かべて、あたしの方を揃って見る。

よかった……本郷さんは、きっともう大丈夫。
結局あたしは何のお手伝いもできなかったけれど、二人の仲直りに立ち会えて、すごく嬉しいよ。


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