バスボムに、愛を込めて


「ああ……久しぶりに」


あたしの上唇を啄みながら、彼が話し出す。

その声は、キスの合間だからかちょっと掠れていて、飽きもせず胸がきゅんと音を立てる。


「キスだけじゃ、足りないって……思う」


言いながら、口の端をちゅうっと吸われた。
気持ちいいって思っちゃう自分が、少し恥ずかしい。


「ふ、ぇ……?」


思考回路がうまく起動しないあたしが間の抜けた返事をすると、本郷さんはクスリと笑ってあたしの耳元で囁いた。


「……ここではしないけどな。兄貴にも誰にも、お前の声は聞かせたくないから」

「ここ、では……って?」

「……いちいち聞くな」


だって……それはこの先、他の場所でなら、あたしを……ってことですよね?

そりゃ聞き返したくもなります。こんなにたくさんのキスを貰ったら、まだ経験のないあたしだって、身体が疼いてる感覚はわかるもの……


「……ダメだ。なんか別のことしよう。お前の顔見てたら理性飛びそうだし、そうなった場合晩メシまでに終える自信がない」


床に転がっていた眼鏡を拾って、かけ直しながら言った本郷さん。

少し残念な気持ちとほっとした気持ちが入り混じって、あたしはとりあえず胸に手を当てて呼吸を整える。


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