バスボムに、愛を込めて


あれは……さっき寧々さんも持ってた、自信作のバスボムだ。

――その名も、“WITH LOVE”。

何の変哲もないピンク色の球体に見えるけれど、中にはハートのチップとさまざまな恋愛の格言の書かれたカードを封じ込めてあって、コレクションとしても楽しめることが評価された。


「……こんなの、よく思いついたな」


バスボムを手の中でボールのようにして弄ぶ瑛太さんが、そう言ってあたしを見る。


「占いを入れてみるのも最初どうかなって思ったんですけど、悪いことが書いてあったら落ち込むし。どうせなら、元気の出るバスタイムを演出したいなあと思って」

「……お前らしい発想だな」


そう微笑んでくれた瑛太さんにふふっと笑いかけていると、キッチンの方にある給湯器がぴぴっと鳴り、『お風呂が沸きました』と教えてくれた。


「これ、せっかくだから使ってみるか。実験用の水槽じゃなくて、実際に家の風呂で使うとどうなるか見てみたい」


瑛太さんはそう言って、バスルームに消えていく。

……そういえば。ちゃんと広いお風呂で使ってみたこと、なかったんだっけ。

ていうか、ハートがたくさん浮かんだ中に、瑛太さんと裸で一緒に……
うぐ。今日は本当に鼻血出ちゃいそう……

あたしは鼻を押さえながらクローゼットを開け、タオルや下着の準備を始めた。


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