バスボムに、愛を込めて
しばらくして部屋に戻ってきた瑛太さんの手には、溶けたバスボムから出てきたのであろう一枚のカード。
何が出て来たのか見せてもらおうと、あたしが瑛太さんの元へ近づくと。
「美萌……これって」
「あ」
それは偶然にも、あたしが川端さんにわがままを言って作ってもらった、試供品限定で入っている特別なカード。
まさか一発でそれに当たるなんて、あたしと瑛太さんてやっぱり運命の相手なのかも。
「これは、あたしのモットーです。それを胸に携えて行動した結果、瑛太さんの心を掴むことができたんだから、恋愛の格言と言っても過言じゃないですよね?」
そう言ってしたり顔を作ってみせると、瑛太さんはふっと笑う。
「……だな。しかし、他の有名な作家とか哲学者とかの言葉に比べてあまりにクオリティが……」
「あ、ひどい! そんなこと言うと眼鏡割りますよ」
頬を膨らませて彼の目元に手を伸ばしたけれど、その手はあっけなく捕らわれて、動きを封じられてしまう。
「冗談だ。……お前らしくていい」
そう言った彼の眼差しは優しく、けれど静かな情熱が放たれていて、キスの予感を感じ取ったあたしは、降りてくる唇を待つために目を閉じた。
ぽす、と持っていたタオルが床に落ち、ふわりと唇が重なる。
さすがに会社ではしないけど、人目がなければ路上とか、何かの影に隠れてとか、瑛太さんはすぐにキスをしてくる。
家にいるときなんて、隙あらばすぐにあたしの唇を奪いに来るから、潔癖だったころの彼は一体どこへ?という感じ。
もちろん、嬉しくてたまらないから、あたしも拒むことはないのだけれど。