バスボムに、愛を込めて


「面白いのねー、羽石さんて」


ホワイトボードの方から、美人の先輩が歩いてきた。


「あれ? あたし名乗りましたっけ……」

「本郷くんに聞いたのよ。異臭ストーカー女が同じチームにいて、先が思いやられるって。すぐにわかったわ、あなただって」


言いながらもずっとクスクス笑っている先輩。

なんで笑われているのかはわからないけど、あたしのいない場所で、本郷さんがあたしを会話に登場させてくれた。それが嬉しいから、まあいっか!


「あ、そうだ。自己紹介がまだだったわね。あたしは葛西寧々(かさいねね)。元はフレグランス部門にいて、本郷くんとは同期なの」


この人がフレグランス……激、似合う。

そういえば、キムチとは似ても似つかぬ花のようないい香りがさっきからしているような。

そして本郷さんと同期だからさっきあんなに楽しそうに話してたのか……羨ましい。


「あたしは羽石美萌です! ベースメイク部門からきました!」

「よろしくね」


この先輩とはうまくやっていけそう。

そう思って安心していたとき、壁に備え付けられた電話が音を立てた。


「……俺が出る」


本郷さんがそう言って受話器を取り、あたしと寧々さんはその会話を静かに聞いていた。


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