バスボムに、愛を込めて


「――え、来れない? 川端さんいないと話が何も……」


電話の相手、川端さん……? あたしは寧々さんと顔を見合わせる。


「封筒? あ、実験台の上にあります。わかりました。じゃあ、午後に……」


カチャ、と受話器を置き、本郷さんは何故か深いため息をついた。

そして白衣のポケットからおもむろに携帯用の除菌スプレーを取り出すと、それを自分の手にかけて熱心に擦り込む。

もしかして……電話に触ったから?


「川端さん、なんて?」


寧々さんが彼の側に近づく。


「……今お嬢様がネイルサロンにいるから、それが終わって昼飯食ってからこっちに来るって」

「あらら……噂には聞いてたけど、本当にわがままそうね」


二人は何やら通じ合っているようだけど、あたしには全然会話が見えない。


「あのう……お嬢様って誰ですか?」

「知らないの?」


寧々さんに聞かれて、あたしはこくりと頷いた。


「もう一人のメンバー、新入社員の小森飛鳥(こもりあすか)さんって言うんだけど、社長の娘なのよ。だから川端さんも扱いに困ってて、こうなっちゃったんだと思うわ」


わ、社長令嬢ってやつか。

それにしてもチーム結成初日にネイルサロンってちょっと非常識すぎるのでは……


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