バスボムに、愛を込めて
「い、いつまでも笑ってないでくださいよぉ……」
本当は嬉しいのに、拗ねたふりとかしちゃうあたし。
少し心に余裕が出てきて、トイレのドアに背中を預けながらスマホを持つ手を入れ替える。
『あぁ、そうだ。お前のせいで忘れるところだった。三日のことなんだが……』
――き、きたっ! デートの“詳細”だ!
あたしは一言も聞き漏らすまいと全神経を耳に集中させた。
そして本郷さんに教えられたのは、当日の待ち合わせ時間と場所と、それから注意事項。
『前日にキムチは食べてくるなよ』
そういう意味であるわけがないのに、“まさかキスするつもりじゃ――!”と、あたしの妄想が広がりかけたのは言うまでもない。
本郷さんはキスができないはずだから、ただ臭い女の隣を歩きたくないって意味だと思うけどね。
「食べませんよ。キムチも焼き肉も餃子も!」
『そうしてくれ。じゃあ三日に――』
電話越しの本郷さんが、そう言いかけたときだった。
「――美萌、俺風呂入りてぇんだけど」