バスボムに、愛を込めて
ドアの向こうで、孝二が大きな声を出した。
空気読んでよ……! あんたに邪魔されたくないからわざわざここに来たっていうのに!
本郷さんにも孝二の声が聞こえたかはわからないけれど、変な誤解をされないようにあたしは慌てて嘘をついた。
「あ、あの……今日、兄が泊まりに来てるので、そろそろ切りますね」
『ああ、そうなのか。時間取らせて悪かった』
あぁぁ、本郷さんに謝らせてしまうなんて、すごく不本意。
全然悪くなんてないのに。むしろひと晩中話していたいのに。
「いえ、気にしないで下さい。海、楽しみにしてますね」
『待ち合わせに遅れたら即、帰るからな』
「本郷さんを待たせるなんてそんなことしません! 三十分前から待ってますね」
『……勝手にしろ』
はい、勝手にします! と心の中で呟き、本郷さんとの会話を終えたあたし。
幸い孝二があれ以上騒ぐことはなかったから、自分でお風呂沸かすことにしたのかな、と思いながら呑気にトイレから出てみると。