バスボムに、愛を込めて
そう、言ってからふと思う。
あれ? あたし、本郷さんに面と向かって“好き”って言ったことあったっけ?
もちろん好意は最初からばれてるけど、こんな風に改めて言うのって、実は初めてなんじゃ――――
そう自覚すると一気に照れが襲ってきて、沸騰したみたいな熱さが顔中に広がる。
絶対、ぜぇったい、今顔赤い、あたし!
ぐりん、と首を動かして海の方へ顔を向け、なんとか平常心を取り戻そうと波の音に神経を集中させる。
それでも胸のドキドキの方が断然大音量で、一人で勝手に恥ずかしさと戦っているときだった。
「……今」
ぼそりと、本郷さんが呟くのが聞こえた。
「ほんの少し……一ミリ、以下。本当にかすかに……だが」
声は小さいし、内容も全く理解できなくて、ただ耳だけを彼の方へ傾けていると。
「お前を、可愛いと思った」
そんな、耳を疑う台詞が横から聞こえた。
本郷さん、今、なんて……?
その言葉が信じられず間抜けな顔をして本郷さんの顔を見上げると、彼は目が合った瞬間に、「ふ」と意味深に鼻で笑った。