情熱効果あり
ギュッ


横に座った状態で抱き合うのは、体制的に少し至難の業だけど、私たちの気分は盛り上がっていたから、そんなことは気にならなかった。

ゆっくり離れて見つめ合う。見つめ合った後にキスが来るのは、お決まりのコースだ。


私は目を閉じた。


「よし!麻衣の気が変わらない内に婚姻届を貰いに行こう」


「え?」


キスを待つ私は哲志先輩の言葉で、目を開けた。

あれ?もしかして、私がキスを待っていることに気付いていない?

それに、なんか切羽詰まっている?


「ねえ、ちょっと待ってよ。別に今すぐ行かなくても…」


「だって、やっぱりやめると言われたら、俺…立ち直れないよ」


今にも歩き出しそうな哲志先輩は、まだ座っている私の手を引っ張っている。


「哲志。あたしの言うことを信用出来ないの?」


「そうじゃない。だけど…」
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