HAIJI
ナナタは心配そうに顔を覗き込んできた。
「……、」
俺は、自分の皿とナナタの皿を見比べた。
「ササライ、」
こんな子供に心配されている。
お兄さんと同じようにならないように。
俺がここで生きられるように。
俺は皿を持ち上げた。
一口。
レトルト独特の味がした。
「旨いよ」
全く正反対の言葉が零れる。
ナナタの表情が明るくなった。
ユキノの予想通り、程なくして雨が降ってきた。
空を見上げると、ずっと遠くに雲の切れ間がある。
どれくらいの距離があるのか確認のしようもない。
ここがどこなのかもわからないけれど、北部なのは間違いなさそうだ。
雲の切れ間はどんどんと遠くなっていく。
辺りが暗くなる。
時間の感覚が全く無くなる。
空を見上げた顔に容赦なく打ち付けられる雨、雨、雨。
空から与えられるものは全て等しい。
「風邪ひくよ」
ユキノだった。
一歩下がったところから、静かに、だけど変わらない声。
視線を向ける。
幼い顔。
純粋な瞳に、俺はどう写っているだろう。
ユキノは、俺の視線を受け止めて、それでも変わらない表情で俺の反応を待っている。
待ってくれている。
こんなにも優しい無条件な施しを、どうして俺は理解できないんだろう。
情けないって言ってくれればいいのに。
それは無いものねだりだろうか。
だって、ユキノは絶対に言わないだろう。