HAIJI
ここには鏡がない。
今の自分がどんな顔をしているのかわからない。
身だしなみという意味では勿論ない。
以前のじぶんの顔で思い出されるのは、学生証に貼られた顔だった。
あとは曖昧だ。
毎日自分の顔を見ていた筈なのに。
それは、見えている部分ですらもう今までの自分ではないからだと思う。
腕を持ち上げる。
骨が目立つようになった。
太股も細くなった。
勿論毎日見ているわけだが、それでも見るからに痩せた。
身体は軽い。
貧相になったと自覚できるほどだった。
あれから、俺にはレトルトや缶詰ばかりが与えられた。
それしか食べられるものがない。
けれど、それすら限界になってきた。
不味い。
美味しくない?と聞いてくるナナタや、俺が食べられるようになんとか考えてくれるユキノに申し訳ないと思いつつ、身体が受け付けなくなっている。
他のハイジたちはレトルトや缶詰は一切食べなかった。
俺が優先されていることは誰が言わなくてもわかった。
けれどそれすら吐く。
どうせ吐くから、と断ったこともあったが、ヨイに怒られた。
けれど、レトルトや缶詰にも限りがあるだろう。
それが無くなれば、俺は死ぬしかないのだろうか。
それも仕方ないようにも思う。
このまま生きてること自体が辛いなら。
死ぬこともまたひとつの手ではないだろうか。
そうだ。
死ねばいいのだ。