地の棺(完)
「気にしなくていいのよ、本当に。初と私のことは。単なる寂しい者同士が身を寄せ合ってただけなんだから」


「寂しい者同士が、ですか?」


「ええ。初はこの家では浮いた存在でね。必要とされてなかったの。わかるでしょう?
桔梗さんも三雲さんも初に関して無関心なのが」


言われてみれば。

椿さんはわたしの隣まで移動してくると、さっと布団の中に潜り込んだ。


「布団あったかいわね。夏だっていうのに天気悪くて寒いから、心地いいわー」


布団にくるまった椿さんは顔だけ出すと、壁にかかったままの押し花を見上げる。

姉の作った押し花を。


「私と柚子はね、ある調査のためにここにきたのよ」


「調査ですか?」


「そうよ。わたしと柚子は大学で蝙蝠の研究をしていたの。
蝙蝠ってわかる?」


「蝙蝠って、あの蝙蝠ですか?」


「ふふふっ。そうよ、その蝙蝠よ。蝙蝠ってね、伝染病や吸血鬼の悪いイメージがついてるけど、本当はとてもおもしろい生物なの。

私達は先輩達がまとめた資料を見ながら、いろんな蝙蝠について調べたわ。
それこそ、海外にもいったしね」


初めて聞いた話だった。

いや、大学で姉がなにをしているか、父も母も詳しくは知らなかったのかもしれない。

姉はいつも聞き役に回るタイプで、自分のことはあまり話さない人だったから。


「ここに来たのも先輩たちの資料を見たからよ。
加岐馬島には日本ではとても珍しいチスイコウモリがいるってね」


「チスイコウモリ?」
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