地の棺(完)
顔から地面にぶつかったせいで、額が石にぶつかり、鼻と口は泥が入ってきた。

じゃりじゃりとした感触が口の中に広がり、土の匂いにむせる。

額はひりひりとした痛みが走り、一瞬にして火がついたように熱くなった。

咄嗟に両手がつけなかった辺り、自分の運動神経のなさを悲しんだ。

手で顔の泥をぬぐい、一体なににつまづいたのかと背後を振り向く。




最初は巨大な猪かと思った。

黒い毛がぐっしょりと濡れ、それを覆っていたから。

でも違うと気がついたのは、隙間から除く白い肌が見えたから。

薄暗くてもはっきりとわかる透き通る白さ。

遠目にみても、それが人間のものだとわたしでもわかった。

金縛りにあったように四つん這いのまま体は動かない。

無事を確かめなきゃ。

そう思う気持ちはあるのに、心のどこかで気づいてたから。


多分、あの人は生きてはいないって。


体を覆う髪の毛の量は、その人物が長い髪の毛を有しているということ。

屋敷で髪が長いのは桔梗さんと椿さんの二人だけ。

ということは、あれはそのどちらかだろう。


寒さからか、恐怖からか、よくわからないけど、震え続ける体に鞭打ち、四つん這いのままその人に近づいた。

爪の中に泥が入る感覚と、ぐちゃぐちゃと緩い土の感触に何度も怖気づきながら。

心臓がドキドキと激しく鼓動しうるさい。

僅かな期待を抱いていたが、目にした奇妙な光景に動きを止めた。
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