地の棺(完)
猪の体毛のような黒い髪の毛。

それは細かく切り刻まれたものだった。

まるで毛皮のようにびっしりと体を覆い隠す程のそれは、とても一人だけのものとは思えない。

その下にある体は胎児のように丸くなり、微動だにしなかった。

所々見えている肌が、衣服を身に着けていないことを表している。

わたしは勇気を振り絞り、右手を伸ばし、その体に触れた。

氷のような冷たさ。

生命を感じさせる温かみは一切ない。

わかっていたことだが、絶望が胸を蝕んだ。

次にその人物が誰か確認するために、顔を覗き込む。

桔梗さんか、椿さんか……

積もった髪の毛を震える手でかき分けると、その下から現れたのは青白い顔の雪君だった。


「ゆ……雪君っ!!!」


わたしは雪君の体の上にかかっていた髪を払い落し、左胸に耳を押し付ける。

とくん……とくんと、とてもゆっくりとだが微かに聞こえる心臓の音。


「生きてる……」


ほっとした瞬間、一気に脱力しかけて、慌てて気を引き締めた。


「雪君っ 大丈夫!? お願い、目を開けてっ」


雪君はなにも身に着けていない。

目に見える外傷もないが、ぐったりとしていて目は硬く閉ざされていた。

頭を強く打っていてはいけないので動かしていいか迷ったが、ここに置いていくわけにもいかない。

体を温めないと今にも死んでしまいそうだ。

わたしに迷いはなかった。

雪君の右手脇の下に手を回し、右手で背中を支える形で状態を起こす。

そしてそのまま自分の両肩に、右手、左手を乗せた。

背負いあげるため、雪君の手を自分のお腹の辺りでクロスさせ、それをぎゅっと強く掴む。

両足に力を込め腰を支点にすると、ゆっくり立ち上がった。
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