地の棺(完)
「風習、なんだよ」


それまで黙っていた初ちゃんが、ぽつりと呟くようにいった。


「風習?」


「ああ。生贄の話知ってるだろ?

あれは本当は……」


「初っ」


快さんが初ちゃんの言葉を遮る。

でも初ちゃんはキッとしたきつい目で快さんを睨みつけ、手元にあった枕を投げつけた。


「ぶっ!」


枕は快さんの顔面に当たり、膝に落ちる。


「なんでわかんないんだよ、快。

僕達はいつまでこんな事続けるつもり?

快が当主になってもきっと続いていく。

子供の、その子供の、更にその次の子供達にまでずっと背負わせるの?

そんなに翼って大事なの?」


初ちゃんの言葉に快さんは驚いた顔で目を大きく見開いた。

初ちゃんは苦しそうに、でもまっすぐに快さんを見つめる。


「快が話さないなら僕が話す。
でも僕は快に話して欲しいんだよ。

お前ならこの家を変えていけるから、だから……」


話してるうちに感極まったのか、初ちゃんの目にうっすらと涙が滲んだ。

快さんは首を軽く振り、微かに口元に笑みを浮かべる。


「そうだな。いつまで続けるつもりだったんだろうな。

わかったよ、初」


快さんは初ちゃんの頭に片手を置くと、ぐいぐいと乱暴に頭をなでた。

そして真剣な顔でわたしに向き直る。


「蜜花ちゃん。この島には宿泊施設がないって知ってるよね?」


唐突な切り出しだったが、戸惑いながら小さく頷いた。


「それは偶然じゃないんだよ。本土から来た旅行者をこの家に泊まらせるためなんだ」


旅行者を泊まらせるため?


「なんで……」


「何百年も昔から、加岐馬の土地は飢え知らずって言葉があってね。

この島ではどんな野菜も育つんだ。栄養価も高く、どんな作物でも苦がなく育つから、多くの農作物研究家や地質研究者に注目されてたんだよ」




< 178 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop