地の棺(完)
キョトンとした、不思議そうな顔がかわいい。


「あ、ごめんなさい。初ちゃん……って呼んでもいい?」


少女は笑顔で首を縦に振る。


「寝てると両親が1時間おきくらいに起こすから、朝も一人で起きれるか自信なくて」


「ご両親が何度も?」


真顔で聞き返す初ちゃんに、なんて説明するか悩んだ。

雪君、快さん、多恵さんはわたしの事情を知っていたみたいだけど、初ちゃんは聞かされてないのかな?

隠す気はないけど、どう説明したらいいんだろう?

言葉を選ぶのに手間取っていると、初ちゃんはわたしの顔をじっと見つめ待っていた。

横に並ぶ初ちゃんのほうがわたしより少し背が低い。

でも真顔になった時の表情は、年上の女性のようだった。


「毎朝起こしに来ましょうか?」


「え?」


わたしが沈黙していたからだろうか?

初ちゃんは真剣な表情をしていた。

なにか深刻な理由があると思わせてしまったらしい。

慌てて両手を左右に振り否定する。


「や、あの、朝が弱くて、それで、ご飯用意してくれるの、無駄にしちゃったら悪いなって……
それだけなの。心配させてごめんね」


そういうと初ちゃんはほっとした表情になった。
雪君といい、初ちゃんといい、二人の優しさが伝わってきて暖かい気持ちになる。
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