地の棺(完)
部屋に入ったわたしは中を見て固まった。
若草色に金色の薔薇模様の壁。
赤を基調としたペルシャ絨毯は細やかな柄が描かれている。
天井にはクリスタルガラスのシャンデリアが飾られ、室内に存在するすべてを煌びやかに光照らしていた。
部屋の中央には特注品だと一目でわかるようなダークトーンの大きなダイニングテーブルが。
その上に並べられた色鮮やかな料理はとてもおいしそうで、わたしのおなかが小さくないた。
しかし、わたしが固まってしまったのは、豪華な部屋の内装でも、おいしそうな料理のせいでもない。
テーブルから静かにこちらを見つめる、無数の視線のせいだった。
好意、敵意、好奇心。
様々な感情が入り乱れた視線を一度に浴びて、情けないことにひるんでしまったのである。
最初が肝心だとか思っていたけど、名乗ることもできない。
「あ……の……」
せめて名前を、そう思い絞り出した声はかすれていた。
見かねたのか、一番近くにいた男性が立ち上がり、わたしに手を差し伸べる。
「蜜花ちゃんはこっちね」
そういうと、手慣れた様子でわたしの手を取った。
「あ、ありがとうございます。えっと……」
「快。志摩快だよ。もう忘れたの? ひどいな」
男性はそういって微笑む。
熟女好きというイメージだけが強くて名前が出てこなかったわたしは苦笑した。
快さんはわたしの手を引くと、自分が座っていた席の反対側に連れて行く。
白いテーブルクロスの上には白いお皿と銀ナイフ、フォーク、スプーンがセットされ、わたしの名前が書かれたプレートが置いてあった。
「あら。快さん、もう面識があるの?」
おっとりとした、でもとても優しい女性の声。
若草色に金色の薔薇模様の壁。
赤を基調としたペルシャ絨毯は細やかな柄が描かれている。
天井にはクリスタルガラスのシャンデリアが飾られ、室内に存在するすべてを煌びやかに光照らしていた。
部屋の中央には特注品だと一目でわかるようなダークトーンの大きなダイニングテーブルが。
その上に並べられた色鮮やかな料理はとてもおいしそうで、わたしのおなかが小さくないた。
しかし、わたしが固まってしまったのは、豪華な部屋の内装でも、おいしそうな料理のせいでもない。
テーブルから静かにこちらを見つめる、無数の視線のせいだった。
好意、敵意、好奇心。
様々な感情が入り乱れた視線を一度に浴びて、情けないことにひるんでしまったのである。
最初が肝心だとか思っていたけど、名乗ることもできない。
「あ……の……」
せめて名前を、そう思い絞り出した声はかすれていた。
見かねたのか、一番近くにいた男性が立ち上がり、わたしに手を差し伸べる。
「蜜花ちゃんはこっちね」
そういうと、手慣れた様子でわたしの手を取った。
「あ、ありがとうございます。えっと……」
「快。志摩快だよ。もう忘れたの? ひどいな」
男性はそういって微笑む。
熟女好きというイメージだけが強くて名前が出てこなかったわたしは苦笑した。
快さんはわたしの手を引くと、自分が座っていた席の反対側に連れて行く。
白いテーブルクロスの上には白いお皿と銀ナイフ、フォーク、スプーンがセットされ、わたしの名前が書かれたプレートが置いてあった。
「あら。快さん、もう面識があるの?」
おっとりとした、でもとても優しい女性の声。