地の棺(完)
わたしの隣の席に座る女性と目が合った。
五十代前半ぐらいの気品を感じさせる大人の女性。
紺色の着物に銀色の帯を締めていて、長い髪を夜会巻きにしている。
女性は優雅な身のこなしで立ち上がり、ゆっくりと会釈した。
それらの何気ない動作も洗練されていてみとれてしまう。
「初めまして。加岐馬島へようこそ。わたしは志摩桔梗。(しまききょう)快と雪の母です」
快さんや雪君の……
わたしは慌てて頭を下げた。
「初めまして。森山蜜花です」
「ああ、君が」
今度は少し離れた席から男性の声がした。
長方形のテーブルの先頭に座る男性。
席の位置からその人物が誰だか予測して、慌てて頭を下げた。
「は、初めまして」
男性はははっと好意的な笑い声をたて立ち上がる。
「私は志摩三雲。(しまみくも)桔梗の夫です」
きりっとした目元は意思の強さがあらわれている。
ロマンスグレーの頭髪を後ろになでつけ、髭のそり残しひとつないその顔も、ライトグレーのカッターシャツに黒いスラックスといった服装も、とても清潔感があった。
自分の父親とは全然雰囲気が違う。
威厳というか、貫録というか……
穏やかな表情と対象的に、その眼はわたしを探るような鋭さを感じさせた。
「ここには一週間滞在するんでしたね?」
三雲さんの問いかけに緊張から何度も頷く。
「い、一週間、お世話になりますっ」
そういって頭をまた下げた。
三雲さんの笑い声で顔をあげると、鋭さを感じさせた視線は和らいでいる。
「かなり緊張しているようですね。
そうだ、まずは家族に自己紹介させましょう」
五十代前半ぐらいの気品を感じさせる大人の女性。
紺色の着物に銀色の帯を締めていて、長い髪を夜会巻きにしている。
女性は優雅な身のこなしで立ち上がり、ゆっくりと会釈した。
それらの何気ない動作も洗練されていてみとれてしまう。
「初めまして。加岐馬島へようこそ。わたしは志摩桔梗。(しまききょう)快と雪の母です」
快さんや雪君の……
わたしは慌てて頭を下げた。
「初めまして。森山蜜花です」
「ああ、君が」
今度は少し離れた席から男性の声がした。
長方形のテーブルの先頭に座る男性。
席の位置からその人物が誰だか予測して、慌てて頭を下げた。
「は、初めまして」
男性はははっと好意的な笑い声をたて立ち上がる。
「私は志摩三雲。(しまみくも)桔梗の夫です」
きりっとした目元は意思の強さがあらわれている。
ロマンスグレーの頭髪を後ろになでつけ、髭のそり残しひとつないその顔も、ライトグレーのカッターシャツに黒いスラックスといった服装も、とても清潔感があった。
自分の父親とは全然雰囲気が違う。
威厳というか、貫録というか……
穏やかな表情と対象的に、その眼はわたしを探るような鋭さを感じさせた。
「ここには一週間滞在するんでしたね?」
三雲さんの問いかけに緊張から何度も頷く。
「い、一週間、お世話になりますっ」
そういって頭をまた下げた。
三雲さんの笑い声で顔をあげると、鋭さを感じさせた視線は和らいでいる。
「かなり緊張しているようですね。
そうだ、まずは家族に自己紹介させましょう」