地の棺(完)
静かなる眠りを
時刻は正午をとうに過ぎていたが食事をする気になれず、わたしは一人部屋にいた。

あの後、遅れてやってきた千代子さんにより、三雲さんに真紀さんの事が伝えられた。

三雲さんが来るまで、かなり時間はたっていたと思う。

でもあの場にいた誰も、ショックが大きくて時間の概念なんてなかったんじゃないだろうか。

ほかの人たちがなにかしていたかほとんど覚えていないし。

たぶん、誰もも言葉を交わしていなかったように思う。

三雲さんが玄関からでてきた音にかなり驚いたくらい、そこは静まり返っていたから。

三雲さんは快さんのシャツをめくり真紀さんを確認した後、すぐに目を逸らした。

そして神原さんに携帯が使用できるか聞いたが、神原さんは首を横に振った。

腰が抜けたように芝生に座り込んでいたわたしは、三雲さんに部屋に戻るように言われ、神原さんと雪君の手を借りその場から去った。



部屋に戻り、一人になった時に初めて事の深刻さを痛感した。

取り乱すことはなかったけど、混乱していたんだと思う。

真紀さんの死を目の当たりにしたことの衝撃が大きすぎて。

そう。

ここは今、外部と連絡をとる手段がない。

警察が呼べないということは、真紀さんをこのままにしておかなくてはいけない。

誰かが土砂崩れに気付いてくれるまで。


真紀さんを外にあのままなんて……

あまりにもひどすぎる。

わたしは流れ続ける涙をぬぐいもせず、ただ泣いた。

なんで?

どうして?

その思いだけで。

しかしそれは、部屋の扉をノックする音で妨げられる。
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