社内恋愛なんて
 車が発進すると、急に眠くなってきた。


これでようやく帰ることができると思うと、気を張っていた糸が切れてしまったようだ。


 後部座席にもたれかかりながら、うつらうつらしていると、部長の優しい声が聞こえてきた。


「着いたら起こすから、寝ていいぞ」


 安心する、部長の声。


寝不足だったから、一気に疲れが出てきたのかもしれない。


お言葉に甘えて寝てしまおう。


部長がいれば安心だ。


無事にマンションまで送り届けてくれる。


 どこかの道で急カーブがあったみたいで、身体ががくんと反対に傾いた。


部長の匂いがする、温かい。


もしかして部長の肩にもたれかかってしまったのかもしれない。


ああ、でももう眠い。


ちょっとだけ、お借りしてもいいですか? 


すぐに起きますから。


ちょっとだけ。


 眠りの中にほとんど落ちてしまっている私は、部長に語りかけてるつもりが声になっていなかった。


そして私は幸せな夢を見た。


部長と手を繋ぎ、身体を寄せ合っている夢だった。

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