俺は、彼女のマンションを出て駅に向かって一人歩いていた。


昨日と同じスーツは、少しくたびれてしまっている。


しかし、俺の心は不思議と爽やかだった。


 それは彼女への想いが、更に深まったからかもしれない。


彼女は前から気になる存在だった。


何に対しても一生懸命で、気が利いて優しくて。


別段目鼻立ちが整っていて、目立つような美人ではないけれど、彼女の笑顔は人をほっとさせる不思議な魅力を持っていた。


 いいなと漠然と思っていたけれど、好きとはっきりといえるほど強い気持ちではなかった。


プライベートでの彼女のことは一切知らないし、よく話す間柄でもなかった。


 けれど、あの日から一変した。


あの日とは、雷雨が激しかった夜のことだ。


そこで、突然俺の中で何かが弾けて彼女にキスをして。


無理やり押し倒すような形になりながら、お互いわけも分からず熱くなっていた。