波音の回廊
Omen
***


 「父上!」


 この日、水城家の当主は、庭園に佇んでいた。


 庭園に設けられた池の清掃日で、作業員たちが繁茂した藻などを刈り取っていた。


 その様子を見守っていたのだが、背後に妻である七重も付き従っていた。


 「清廉」


 当主が駆け寄ってくる息子の名を呼ぶより先に、息子は七重の頬を殴った。


 「きゃっ」


 「この毒婦!」


 七重は地面に崩れ落ちた。


 「よくもつまらぬ嘘を……! 私がなぜお前などを……。ふざけるな!」


 「清廉!」


 再度殴りかかろうとする息子の腕を、当主はがっちり掴んだ。


 「父上、私は黙ってなどいられません。こんな女に下品極まりない濡れ衣を着せられ……!」
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