もう一度、あなたと…
Act.4 寝てみるの…?
式が済んで、後ろを振り返る。列席者からの祝福を受けながら、扉の前に二人で立った。

「この扉の向こうに披露宴に出席される方々がお待ちかねですから」

そう説明されてギクリとした。
もしかしたら、その中に太一の姿もあるかもしれない。
彼が夢の中でも、同じ会社で働いているとしたら…だけど。

式場関係者が扉を開ける。眩しい光で一瞬前が見えなくなる。
でも、次の瞬間……

「おめでとう!エリカ!!」
「ヒカルの君も、おめでとう!!」
「きゃー!キレー…!」

沢山の祝福と歓喜の声に包まれながら、お祝いの拍手を受ける。
目の前に広がる緑の芝生。そこに集まっているのは、学生時代からの友人や会社の同僚。
その中に太一の姿はなくて、私はひどくホッとしていた。

「花嫁さん、ブーケトスを」

式場関係者に促され、後ろを向いた。

『せーのっ!!』

女子達の弾かれる声に合わせてにブーケを投げる。
奇声を発して取り合う女子達の一人が、ブーケを手にして振り上げた。

「やリィ!」

夢の中でもリーダー格っぽい舞に、皆が負けた…って顔してる。

(舞ってば…)

燥ぐ姿を見て、つい微笑む。
それに「たからがひかる」が気づいた。


「やっと笑ったな」

そう言われて彼を見た。ニヤついてる。

「ずっと浮かない顔してたから心配した。そのままでいろよ」

近寄って、フワッと身体が持ち上げられる。
お姫様抱っこされて、自分の顔が彼のすぐ側ままで近づいた。

「きゃっ!ちょ…!やめっ…!」

初めての体験にしがみ付く。嬉しいからじゃない。突然でビックリしたから。

女子達から悲鳴に近い声が上がる。
冷やかしのような口笛を鳴らされる。
驚いてる私に比べて、「たからがひかる」はとても満足そうな顔をしていた。

「エリカ…」

振り向く彼と視線を合わす。
この人とこれから先もずっと、顔を見合わせていくんだろうか…。

(記憶も混乱したまま…?夢だと知りながら…?)

不安が募る。でも、それをかき消す様に「たからがひかる」の顔が近づいた。

(えっ…⁉︎ キスするの…⁉︎)

ドキッとして目を閉じた。
……優しいキスが教えてくれた。

どんな私も愛してる。
心配なんかしなくていい…。
自分が側にいるから……と。


ぎゅっ…と肩を抱く手に力を込める。
現実には叶わなかった夢を叶えてくれた彼に、

心から…感謝したーーーー。

< 21 / 90 >

この作品をシェア

pagetop