殺戮都市~バベル~
夢の終わりに
ぼんやりと光る塔の内部、俺は冷たい階段に腰を下ろし、名鳥と狩野が落ちて行った場所を見詰めていた。


あれしか方法はなかったのか。


俺がもっと上手くやれてたら、名鳥が散弾銃を撃った時にビショップは死んでいたんじゃないかと。


改めて自分の非力を痛感してしまう。


「……少年、行くぞ。我々に悲しんでいる時間などないのだからな」


そんな俺に、恵梨香さんが冷たい言葉を掛ける。


悲しんでいる暇はない……そんなのわかってるよ。


わかってるけど……。


「行きますよ。でも、仲間が死んだんですよ。少しくらい悲しんだっていいじゃないですか」


なんとか立ち上がって、階段を上りながら俺はそう答えた。


いつも適当で、真面目なのか不真面目なのかわからなかったけど、戦いになると目付きが変わって凄まじい安心感を与えてくれる名鳥が死んだ事は、俺の心に大きなショックを与えた。


狩野に桜良、大友が死んだのもショックだけど、やはり兄のような、父のような存在だった名鳥は特別大きい。


「今は悲しみに囚われてる場合では……」


その気持ちを少しは察してくれたのか、恵梨香さんが俺の肩に手を置いてそう呟いたけど……。


パンッという音と共に、その手が肩から払われたのだ。
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