殺戮都市~バベル~
そして、恵梨香さんの手の代わりに置かれた手。


いや、俺の肩をグッと掴んだ手が、強引に振り向かせる。


後ろを向いた瞬間、目に飛び込んで来たのは沼沢の拳。


それが顔面に直撃し、俺は階段の上に倒れてしまったのだ。


「……テメェを見てると反吐が出そうだぜ。奈央が死んだってわかった時、俺もこんなだったかと思うとな」


鎖を巻いていない、素手での攻撃だったけど……不意の一撃は効いた。


「あー、そうそう。あの時の沼沢はなかったよねー。戦闘中だってのに放心状態でさ」


吹雪さんが茶々を入れるけど、沼沢は睨み付けるような目を俺に向けたままで。


それは俺に向けているのか、過去の自分に向けているのかわからないけど、怒りと苛立ちを感じている事ははっきりとわかる。


だから……その目に俺も苛立ちを感じた。


「俺もあんたも同じだろうが!人が死んだら悲しいし、時には打ちひしがれる事もあるだろ!それでも前に進んでるんだ!文句を言うなよ!」


起き上がって沼沢のマフラーを掴んで、怒鳴り付ける。


俺も沼沢も大切な人を失った者同士なのに、自分の事を棚に上げて、俺を責めている事に腹が立ったから。
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