坂道では自転車を降りて
えと、、美波さん?
 新しい演目が決まる度、部室には1冊の共有ノートが設置される。シーンごとの稽古のスケジュール、舞台装置の制作、すべての進行を把握するためだ。ほかに、部員が思いついたことなどを、脈絡なく書き込んでいく。業務連絡などもここだ。最後は落書き帳のようになる。稽古が終わった後、俺は台本への書き込みや思いついたことを纏めながら、次の稽古の予定を書き込んでいた。


「遅いんだね。いつも最後?」美波だ。
「いや、原の方が遅いことが多い。裏のやつらのこともある。」

原は役者の管理、衣装や小物の役割分担、大道具の進捗、学校行事と部のスケジュールを調整し、他部とおりあいをつけながらの体育館の利用許可などを、全て管理してくれている頼もしい部長だ。もちろん全部自分でやっているわけではなく、それぞれ担当を決めて配分しているわけだが、その人に向いたやりがいのある仕事を割り振るのは、誰にでも出来る事ではない。それに加えて脚本の内容に関する教師達からのクレームまで処理してくれる。笠原部長の時は、俺もよく職員室に呼び出されたが、部長が原に変わってからは、ほとんど呼び出されなくなった。
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