キスは目覚めの5秒後に
正しい休日の過ごし方
朝、目覚めと共に窓の外を眺める。
雲ひとつない青空の下、向かいにあるクリーム色の外壁に当たる陽が徐々に広がっていく。
「外は寒いのかな・・・」
マンションの窓ガラスは三重で、部屋の温度はほとんど外気に影響されないから常に快適温度だ。
今の時期この暖かさに油断して一歩外に出れば、予想外の冷たい気温に驚く事が多い。
「ここも外気を計る温度計があればいいのに」
留学している時に住んでいた部屋には備え付けてあって、いつもそれを見て着る服を選んでいた。
「今日は、何をして過ごそうかな」
バッグを盗まれてから初めての休日。
昨日橘さんからいただいたお金の残りはまだまだあるから、出掛けようか。
いろいろ買うことはできないだろうけど、屋台のケバブを食べたりアイスを食べたりして、ウィンドウショッピングくらいは楽しめるだろう。
橘さんは、休日は何をするのかな・・・。
「おはようございまーす・・・」
昨夜の出来事を思い出して、なんとなく気恥しい気持ちを押さえてダイニングに行くと、橘さんは休日なのにもう起きていた。
この人は、休日は寝坊をするタイプではないみたいだ。
「おはよう。今からコーヒー入れるところだ。待ってろ」
「あ、じゃあ私、パンを焼いてベーコンエッグ作ります」
淡いブルーの扉が付いたシステムキッチンに二人で並んで立つ。
橘さんは手慣れた仕草でコーヒーを準備し、私は冷蔵庫から卵とベーコンを取り出した。
「俺がパンを焼くよ」
既にコーヒーを準備し終えた橘さんが私の背後にすっと立つから、心臓がとくんと跳ね上がった。
背の高い彼が、私の頭の上にある棚からパンの入った籠を取り出す。
それだけのことなんだけど、妙に意識してしまう。