キスは目覚めの5秒後に
橘さんにとっては、こんなの何でもないことなんだろうな・・・。
いい感じに卵が半熟状態になったところで皿に移すと、ちょうどパンも焼き上がりコーヒーも準備できた。
「いただきます!」
「竹下美也子、今日はどうするつもりだ?」
「出掛けようかなって思ってます。行きたいところがたくさんあるし、今日はお天気がいいから。それで、橘さんからいただいたお金の残りを使うんですけど、いいですか?」
「それはあげたものだから、自由に使えばいい。で、その行きたいところってどこだ?俺が連れて行ってやるよ」
「ええ!?一緒に行くんですか?」
意外な言葉に驚いてしまい、思わず顔を歪めてしまった。
いいのだろうか。私の行きたいところはアンティークショップで、橘さんからすればオタクに思えてしまう場所だと思う。
そんな私を見た橘さんは苦笑いをした。
「そんな顔をするな。手負いの猫の面倒をみるのは俺の仕事だ。我慢しろ。今日は一日一緒に出掛けるぞ。まあ、いわゆる“休日デート”ってやつだ」
休日デート。
なんてリア充なお言葉なんだろう。
そういえば、元彼との末期はほとんどデートしてなかったな。
それも結婚資金を貯めるために、節約しているとばかり思い込んでいたっけ・・・。
「それに、来週にはクライアントのホームパーティに呼ばれているんだ。あんたも連れていくから、出掛けるついでに服を買うぞ」
「ホームパーティに私も?いいんですか?来週って、いつですか?」
「土曜だ。予定としては、帰国前日になる。そのつもりでいてくれ」
帰国前日、か。
バッグもまだ見つかってないし、渡航書の申請もまだだ。
本当に予定通りに、帰れるのかな・・・不安になる。