花盗人も罪になる
小さなしこり



金曜の夜、逸樹が大阪から帰ってきた。

お土産は大阪銘菓や冷凍のたこ焼き、ご当地の面白いストラップなど、こちらではなかなかお目にかかれない珍しいものばかり。

5日間目一杯仕事をして疲れた様子の逸樹は、帰るなり紫恵を抱きしめて、会いたかったと言いながら頬ずりした。

久しぶりに紫恵の作った夕飯を食べた逸樹は『やっぱりしーちゃんの作った御飯が世界で一番美味しい』と満足そうに笑った。



逸樹がお風呂に入っている時、紫恵は逸樹が持ち帰った出張中の洗濯物を仕分けていた。

5日分のシャツや靴下などを洗濯機に入れている時、一枚のワイシャツを手に紫恵は眉をひそめた。

ワイシャツの袖に、ファンデーションと口紅のような物がついている。

一体どこでこんな汚れをつけて来たのだろう?

満員電車なのか、それとももっと違う場所なのか。

逸樹が何も言わなかったところを見ると、きっと逸樹本人はこの汚れに気付いていないのだろう。

気付いていたらきっと逸樹の口からその理由を言うはずだし、言わないのは本人が気付かないうちについてしまったからか、もしくは紫恵に言えないような理由だからなのかもしれない。

紫恵は洗濯機の前で腕を組み、口をへの字にして首を傾けた。

一体何があったのだろう?

逸樹はそれを正直に話すだろうか?



< 84 / 181 >

この作品をシェア

pagetop