強引専務の甘い手ほどき

勤務のあとで。その2。

勤務が終わると、
「西島。行こうか。」と専務が私のデスクにやった来た。
いつもは石神さんが、打ち合わせと言って、私を連れ出しに来るけど…。
「カエデさん、デートですか?」と美鈴さんがニコニコからかった声で聞く。
「ちっ、違います。」と荷物を持つと、
「デートだろー。」と専務が笑って、美鈴さんが驚いた顔で手を止める。

「えっ、専務、誤解されたらどうするんですか?」と私が顔をしかめると、
「デート。だよ」と私の手を掴み歩き出した。

ええ?!
秘書室のみんなが私たちを口を開けてみている。

「こら、キサラギ社内で手をつなぐな!」と石神さんが専務室から顔を出す。
「うるせー」
と専務は振り返って石神さんに顔をしかめて、エレベーターに乗り込んだ。
私は唖然とする。
「せっ、専務。てっ、手を離してください。」とエレベーターの中で言うと、
「キサラギって呼べ。もう、仕事は終わっただろ。」と手を離して、私の顔を見た。

下の階に止まって、他の社員が乗り込んでくる。
みんなが専務に黙礼し、遠巻きにエレベーターに乗ってくる。

「カエデ、今日は何食べる?」と専務は私の顔を見る。

みんなが注目してますけど?!
私は顔が赤くなって返事ができない。

「前にカエデに連れて行ってもらったところも好きだけど、
今日は少し、お洒落なとこで食おうか?デートだし。」と普通の声でさらに続ける。

うわー。
ど、どうしたらいいの?
みんなは目を伏せ、息を潜めている。

「どっ、どこでも…」と、小さな声でやっと言うと、

「じゃ、俺に任せるって事で。」と私にニッコリ微笑みかける。

チン。とエレベーターが止まって、
専務が私に腕を伸ばし、肩を軽く抱いて歩き出す。
私はギクシャクと専務と一緒に車止めに向かった。


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