エリート御曹司とお見合い恋愛!?
8.するものではなく落ちるものらしい
 美容院に行き髪をセットしてもらって、この日のために用意しておいたワンピースに身を包む。お見合いの会場となっているホテルのロビーに母はすでに来ていて、私を見ると全身をくまなくチェックするかのような視線を送ってきた。

 母は濃紺のスーツを着こなし、化粧もばっちり決めている。相変わらず仕事ができる女性そのものだった。その視線を受けて、私は緊張のあまり、倒れそうになる。お昼もほとんどなにも口にしていない。けれど、私は意を決した。

「お母さん、ごめんなさい。私、このお見合いをお断りします」

 母がなにかを言う前に私は勢い良く告げて、頭を下げた。

「突然、なにを言ってるの!?」

 形のいい眉がつり上がり、怒号が飛んだ。私は怯えつつも必死に続ける。

「ごめんなさい、相手の人には、私からちゃんとお話しします。だから」

「ふざけないで! お父さんの知り合いの息子さんなの。ちゃんと信頼できる人なんだから」

 激昂する母に私は再度深くこうべを垂れる。

「お母さん、本当にごめんなさい。私、いつも期待に応えられない娘で。いつもなにひとつお父さんやお母さんの言うことも、望みも叶えられなくて。でも、どうしても譲れないものがあるの。自慢の娘にはなれないけど、でも、私なりにこれからも精一杯頑張るから、だからどうか許してください」

「美緒、あなた……」

 母の目が大きく見開かれたところで、ふいに名前が呼ばれた。
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