強引社長といきなり政略結婚!?
白馬に乗った王子様?
「……おり……汐里、起きなさい」
体を揺さぶられる感覚と呼ばれた名前に目を開けると、そこに母の姿があった。
「……もうちょっと寝かせて。今日はアルバイト休みだし……」
昨夜は多恵さんとヨガをやったあと、遅くまで“T・E”のブルーレイと格闘していたのだ。何度となく繰り返し観てきたせいか、どこかに傷が入ってしまったらしい。同じ箇所で映像が途切れるようになってしまった。
おかげで、まだまだ眠い。
「そうはいかないのよ。朝比奈さんがみえてるの」
「……え?」
閉じた瞼を片方ずつ開ける。
ベッドサイドにあった時計を見てみれば、時刻はまだ朝の八時。こんな朝っぱらから、いったいなんの用事で。
「出かける約束したんでしょう?」
「してないよお」
毛布を頭から被り朝日を遮断したものの、「とにかく起きなさい」と母が引きはがした。なんの嫌がらせだ。