溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜


「最近はさ、みんな便利で簡単に予約できるところに行っちゃうんだよねー」

さっきまでケラケラと笑っていた千葉さんが何を思ったのか、突然ハァとため息をつきそう言う。

「お客さんが流れて行ってるの嫌でもわかっちゃう」

最初の話によると、今までは電話で予約を受けて、それをノートの書き留めていたとか。新しいキャンペーンなどを始めたときなんかは、ハガキを送っていると言っていた。

電話でやり取りするというのは、今時の子達には面倒な作業なのかもしれない。キャンセルしたいと思ったときは尚更。

それに、そのハガキも見ている人は一体どれくらいいるだろう。私も家に来るそういう類のものはろくに読まずに捨ててしまう。

「そうだ千葉さん、顧客マスターに、自動でメールが配信されるよう組み込みましましょうか? この前は来店ありがとうございましたとかでもいいですし、キャンペーンの宣伝とか相手に送れますよ」
「え? マスター? 私のお客さんにバーテンは確かいなかったけど」

真剣な顔でそういう千葉さん。思わず九条さんと目が合う。
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