溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「あの、何階ですか?」
「同じ階で大丈夫です」
ん? お隣の会社の人かな。同じフロアには確かもう一つ会社が入っていたし。だけどこんな人いたっけ?なんて詮索しながらチラッと振り返って見てみると、思わず目が合ってしまい慌てて逸らした。
なんで見ているんだろう。徹夜明けで髪がぼさぼさだから? それとももしかしてやばい人? こんな朝から変態?危機感を感じていると、コツッと靴が鳴る音がして、男性が近づいてくるのがわかった。
ど、どうしよう。九条さんと一緒に来るべきだった。まさか同じビルに、変質者がいるなんて。ここは警備員さんに……。焦りながら非常用ボタンを目で探していると、
「ねぇ、もしかして気づいてない?」
背後からポンと肩を叩かれひーっ! と声が上がる。