溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜


「ビックリしすぎだから」

そう言ってクスクスと笑いながら迫って来たかと思うといつの間にか壁際に追い込まれていて、すっかり囚われてしまった。

「あ、あの。お金は持っていません」
「え?」
「か、彼氏がすぐそこにいるのでなにかしたら言いつけますよ」

声を上ずらせながら必死にそう抗議する。だけどその男性は何を思ったのか、グッと顔を近づけてきて吐息のかかる距離で残念そうにこう言った。

「彼氏かぁ。やっぱりそういう関係になっちゃったのね。一歩遅かったか」

……ん? この声、口調、誰かとそっくり。
恐る恐る視線を上げ見ると、そこには綺麗な女の子みたいな顔があって、目元に特徴的なほくろがあった。あっ!と思った。

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