大剣のエーテル

*溶け始めた感情



「申し遅れたな。俺の名はイヴァンで、連れはランバートという男だ。」


歩き出して数分。

私の隣に並んだ彼は、少しずつ自分達のことを話し始めた。


「あ、私はノアです。」


「ノア、か。いい名前だな。」


そんなセリフ、初めて聞いた。

そもそも、こうやって誰かと並んでお喋りをしながら歩くなんて生きてきて一度も経験したことがない。

私は、少し浮かれながら彼にさっきから気になっていたことを尋ねた。


「あの…、ランバートさんは今どこに?この町に知り合いの方でもいらっしゃるんですか?」


「いや、そんなものはいない。だが、奴の居場所は大方見当がつく。恐らく、本屋で目新しい図書を買い漁って読んでいるか、その辺の森の中で安らかに寝ているんだろう。急な土砂降りにでも遭えばいい。」


冷たい物言いだが、彼らの間にはある程度の信頼関係と長年の絆のようなものがあるらしい。

仕事仲間と言っていたが、彼らの詳しい関係と素性は未だに謎である。

2人で他愛もない会話をしているうちに路地を抜け、辺りには自然が多くなり始めた。

もうすぐ、私の家に着く。


「…随分と町の外れに家があるんだな。家の方はいらっしゃるか?俺だけでも挨拶をしないと…」

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