生贄姫は隣国の死神王子と送る平穏な毎日を所望する

36.生贄姫は心を晒す。

「さて、リーリエそろそろお互い腹を割って話そうか?」

「旦那さま、割らされそうなのが私の方だけのような気がするのは気のせいなのでしょうか?」

 隣に座ったテオドールを近いですと両手で押して距離を取ろうと抵抗するリーリエ。
 当然だがテオドールの身体はびくともせず、リーリエは逆に両手を取られてしまう。

「リーリエの口を割らすにはコレが1番有効らしいしな。それに夫婦間でスキンシップを取って何の問題がある?」

「今までしなかったじゃないですか!? キラキラオーラ出して脅すのやめてくださいませっ。絶対嘘つけないやつじゃないですか」

 我ながらチョロい。
 チョロ過ぎると自覚しながら、できれば画面越しで見たかったとリーリエは嘆く。

「旦那さまはお嫌ではないのですか? 何とも思っていない相手にこんなあからさまな色仕掛け(ハニートラップ)

 リーリエはせめてもの抵抗でじっと睨みつけるが、赤面した顔に潤んだ目。はっきり言って逆効果だなんて、気づいてないんだろうなとテオドールは苦笑する。

「心配するな、割と楽しんでいる」

「お楽しみ頂けて光栄ですわっ!」

 半ばヤケクソのように言い放ったリーリエには淑女の仮面をつける余裕など無かった。

「何が、お知りになりたいのですか?」

 諦めたようにため息を漏らしたリーリエはそう尋ねる。

「体調は問題ないか?」

 リーリエの手を解放し、テオドールは離した手でリーリエの頬に触れ、翡翠色の目を覗き込む。

「ご心配頂きありがとうございます。魔素は全て消費しきって、魔力値も魔力循環も正常です。動悸も破壊衝動も落ち着いてますので体調面は良好ですが、メンタルと情緒が崩壊しそうですわ」

 主に旦那さまのせいでとややトゲトゲしくそう付け足すリーリエ。

「今までもこんなことがあったのか?」

「コントロールができない子どもの時分には頻回にありました。最近ではスキル暴発がない様に、調整をしておりましたので、ここまでのことはなかったです。リスクを取る以上当然、対策はとっていましたし」

 リーリエは首に下げていたチェーンを手繰り寄せ、小さな石がはめられた指輪を見せる。

「これは、私の加護石を入れた魔道具です。発動効果は遅延。時の魔女様の魔力を保存し、私自身の魔素への変換スピードを抑えています。あとは内服薬での浄化と運動による消費で抑えておけるはずでした」

「遅延スキルって、かなりレアじゃないか」

 テオドールは信じられない様子で指輪を眺める。
 時間や時空を操るスキルは存在するが、伝説級の代物で、本来滅多にお目にかかれるものではない。

「魔女様とは飲み友達なのですよ」

 ただし前世でゲームをやり込んでいたリーリエは隠しクエストで、時の魔女がどこにいるのかを把握していたので、直接会いに行く事ができた。
 流石に魔女様が思っていたよりずっと気さくで、カクテルを作っただけで遅延魔法をかけてくれるとは予想していなかったけれど。
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