王子は冒険者になる!
いわゆる、庶民になる準備らしい

抜け出したい!


***


「ーーーですから・・・王子?」

あーもぉ。うるせー。
と思ってはいるが口には出さないぞ。
マナーの時間が増やされる。

「ですから、今回の視察では、
 って、聞いてらっしゃいます?」
「はい、はい。はーいっ。聞いてる。」
「・・・返事は、はい。だけでお願いします。」

わかった。と言って
にこーっと笑うけど
ジゼはちょっと睨むように目を細めた。

こいつには「王子スマイル」が 好きじゃないらしい。
へらへらしやがって。って感じか?

彼は、ジゼディシアロー。長いからジゼって呼んでる。
俺の15個上の側近。

てか、10歳の俺に、25歳のジゼが付くって・・・
普通なのか?
アレク兄様の側近のサントスだって2個上ぐらいなのに。

まぁ、いいか、
俺には考えもつかない采配があったんだろうな。
・・・こんなガキに悪いなぁ。
騎士ビラットと騎士タイラーとは同世代だから仲良くやっていてるみたいだ。


普通は、側近は同年代が多い。
苦楽を共にし、ともに成長してお互いを信じられる。そんな関係だからだ。

ジゼは伯爵家の長男として生まれたが、
文武を得意とする家であったため、攻撃力魔法の弱かったジゼは
文官を目指して、王宮に努めたらしい。

まさか、25歳で俺の10歳の第二王子の側近になるとは思っても見なかっただろうな。
もちろん、申し訳ないくらいの優秀な男だ。
でもさすがにこんな年下に使えるとは思わなかっただろうな。
周りも、この采配に驚きを隠さなかった。
数日前に顔合わせをして、父から「お前の側近候補だ。」と紹介された時の衝撃は
俺より、周りのほうがざわざわしてたしなぁ。

リィアとセーラでさえ 配属通知に驚いてたし、
騎士ビラットは知ってたんだろうけど、なんだか複雑そうだった。


というか、
すっかり子ども扱いだよ。
ジゼから見たら俺、子供なんだけどな。

まぁ、何はともあれ視察という名の
城下街の見学があるらしい。やったよ!!もう説明とか聞いてないよ。
工場とか、施設の見学、慰問らしいけど
外に出れる!みたいな喜び!!

っていうかさ、
城も、遊びに行く別荘も、別邸も
もしくは招待される貴族家も
広いから気が付かなかったけど、

これって軽い軟禁状態だよなー。
自由に外に買い物っていけないし。

というか、『買い物に行く』っていう発想がなかったな。

でもな、
一人で『冒険』とかするには必要なことだよな。
本や、知識だけでは補えないから、
これをチャンスに、ぜひ、俺、ちょっくら
抜け出したい。


それには、協力者が必要だな。


ジゼは、ダメだろうな。
優秀であるが、優秀であるが故
俺が変わったことや変なことをするの、拒むだろうな。

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