君と見つける、恋の思い出

同級生



その瞬間強い風が吹き、桜の花びらが舞ったせいで、相手の顔は見えなかった。



……だが、十中八九あいつだ。



俺を呼んだあいつは、走って階段を降りてきていた。



「お前、こんなとこでなにしてんだ? て、カメラ! 蓮、美術部にでも入部」


「してない。つーか、うるさい」



俺はそいつの言葉にわざと被せ、黙らせた。



ったく……


どうしてこううるさいやつしか周りにいないんだ。



「そう照れんなよ。何事にも興味なかった蓮が、美術部」



そいつは肘で俺を突いてきた。


それもまた腹が立ち、もう一度遮った。



「入ってないって言ってるだろ。しつこいぞ」


「……わざわざ俺のセリフに被せてくんなよ」



あいにく、お前と会話する気がないんだ。



「ところで蓮。今暇か?」


「忙しい」



もし暇だったとしても、お前に付き合う気もないが。



俺は階段を登り、家への道を歩く。



「そう言わずに、ちょっと付き合ってくれよ。友達だろ?」



後をついて来ていたそいつに、肩を組まれた。



鬱陶しい。
< 31 / 240 >

この作品をシェア

pagetop