鳴海 彩乃(ナルミ アヤノ)二十八歳
繊維会社経理部 所属
×
梁川 環(ヤナガワ タマキ)二十九歳
梁川百貨店 専務取締役


「彩乃なんかと付き合うんじゃなかった」
半年間付き合っていた元彼氏に投げつけられた言葉。
去り行く彼の姿に呆然としていた。

恋を知らなかった私は彼氏の望む「彼女」になりたかった。でもそれが「恋」ではないことに気づかなかった。

あなたと私の出会いは最悪。

会社の廊下で泣く私に、あなたはひと言、言い放つ。

「邪魔なんだけど」

漆黒の髪に夜色の瞳。見惚れるほど美麗な顔立ちのあなたは私を冷淡に追い詰める。

「その髪型、全然似合っていない」

だったらどうして私の髪を綺麗だなんて言うの? 私の髪に口づけるの?



『三十歳までに結婚相手を見つけること』

地所を管理する名家に産まれた私が、都内で仕事をし、独り暮らしをするために実家から出された条件。

もう時間がない。条件を満たすためには祖母のすすめる人と見合いをするしかない。

……どうしてあなたが見合い相手になるの?

やって来たあなたは、私に策略結婚をもちかける。

「君は条件を満たせるし、俺は君の実家の土地を手に入れて仕事を有利にできる」

お互いの利益のための策略結婚のはずだった。

そこに恋情はない。

恋に向いていない私にはこの結婚がピッタリなはずだった。


なのにどうして。

私に入籍を強引に迫るの?

そんなに甘く微笑むの?

私を抱きしめて毎晩眠るの?

そんなに切ないキスをするの?


……好きだ、なんて言うの?


あなたにはほかに想う人がいるって知ってる。

だから私はあなたを好きになんかならない。私たちはただの策略結婚のパートナー。

そう決めていたのに。


私はあなたに恋をしてしまった。

夫への叶わない恋。


私はどうやってあなたを諦めたらいいの?

優しくしないで。期待させないで。


あなたの本心が知りたいのに口には出せない。

恋がこんなに恐いなんて、苦しいなんて、切ないなんて知らなかった。



降り積もるこの想いを、私はどうしたらいいの?















あらすじ

鳴海彩乃は繊維会社に勤務する二十八歳。元彼氏の酷い言葉に思わず社内で泣いてしまう。そんな彼女に会社訪問中、辛辣な言葉を放つ見惚れるほど美麗な男性。彼、梁川環は世界中に店舗をもつ梁川百貨店の御曹司で専務取締役でもある。実家から三十歳までの結婚を強要されている彩乃に彼は自身の仕事のため策略結婚をもちかける。次第に環に惹かれ、恋心を抱く彩乃。そんな中、環に想い人かいることを知った彩乃が選ぶ道は?


この作品のキーワード
御曹司  専務  イケメン  溺愛  クール  強引  地味  策略結婚  両片思い